とにかく美しい!
美しすぎるアニメと言えるヴァイオレット・エヴァーガーデン。
アニメが放送されて1年以上経ちます。
いまさらながら、ヴァイオレット・エヴァーガーデンの小説も読みました。
映像が美しいだけでなく、ストーリーも本当に美しい!
ヴァイオレット・エヴァーガーデンと言う名の少女が郵便局の手紙の代筆屋としてのお仕事で色んな人に出会い、色んな土地へ赴いていく話です。そんな中でヴァイオレットと出会った人が少しずつ変化をしていきます。
ふと目頭が熱くなるドラマが詰まっています。
群像劇の様に、代筆を頼んだお客様目線の話もあれば、ヴァイオレット目線の話もあります。
作中では、代筆屋は「自動手記人形(じどうしゅきにんぎょう)=オートドールメモリーズ」と呼ばれています。
母と娘の愛
アニメでも個人的に一番印象に残っていたのが、第10話の「愛する人はずっと見守っている」とストーリーでした。
小説では「少女と自動手記人形」と言うタイトルです。
余命幾ばくも無い母親と7歳の小さな娘:アン・マグノリアのストーリーはやるせなさと非常に深い愛を感じさせられます。
裕福な家庭のアンの母親は財産はあるが、決して周囲の人には恵まれていないながらも、少女の様な純粋さを持ち、好奇心旺盛で優しい。だからこそ、人々が彼女にお金の無心にさえ来る。そして、父親もまた彼女の看病すらしないくせに、お金だけは要求して家にはいない。
そんな母の姿をアンは見ながら、母以外の人をあまり信用しようとはしない。とにかく母を守らなくてはと小さいながらもとてもしっかりしていて、なんだかいじらしく可愛らしい。
そんな二人の下にヴァイオレットが代筆屋として家に招かれる。ペンも握れないくらいに弱った母親がヴァイオレットに手紙を書いてもらうのです。
アンはまだまだ小さく、母親といたいと言う気持が強いのに、ヴァイオレットと二人で手紙を書くからと言う理由で母親と一緒にはいられない。アンは非常に寂しい思いをします。
しかし、7歳でありながらも、お客様には、お肉をたくさん盛り付けて、デザートにはシャーベットじゃなくてケーキにしなくてはと思ってしまうあたりは、気がきいているのが何とも可愛らしい。
アンはヴァイオレットを警戒しながらも、ヴァイオレットの存在に気をとられていく。そして、ヴァイオレットにかまってもらおうとする姿が非常に子供らしく、可愛らしい。
受け止める言葉
ヴァイオレットの代筆の契約は一週間ほど。その間に母親の容態が悪化していく。それを見たアンは母がますます心配になり、手紙を書くのをやめる様に頼んだり、手紙を書いている時間も母と一緒にいたいとせがむが、それは許されない。
だから、アンも気を取り乱して泣いてしまう。
そんなアンに対してヴァイオレットは、
「小さい体で母親の病気を受け止めて、文句も言わず母親の世話をして立派です」
と。
短く要約したのですが、非常に印象深い言葉だと思いました。
子供が自分の感情を上手に解消できなくて、泣いたり怒ったり、言ってはいけないと思ってはいるけれど、つい言ってしまう事はあると思います。そんな時の子供は非常に苦しい思いをしているはずなのです。
だけど、大人はそれを見たり聞いたりすると、
「泣かないで!」
「怒っては駄目!」
「そんなことを言っては駄目!」
と諌める事のほうが多い気がします。
しかし、それらの言葉だけでは子供の感情の行き場は無くなってしまいます。ただただ、悲しい、辛いと言う感情がどんどん心の奥に積もって行きます。
だから、こうしてヴァイオレットが「立派です」とアンに対して言ったのはきっと7歳の少女の心を救う事になったのではないかと思います。
言葉は自分に返ってくる
でも、すぐには高ぶった感情は解消できません。大人でさえ難しいのに子供ならなおさらの事でしょう。
アンは、「母が私を一番に愛してくれない!」と怒り、嘆いてしまい舞す。
そんな彼女にバイオレットは母、親を悲しませる言葉は、アン自身のためにも慎むようにと言います。
とても印象的です。
ただ悪い言葉を吐いてはいけないと言うのでは無く、その言葉を吐いた人自身のために、悪い言葉を言わないようにと諭す。
事実、多くの言葉は良かれ悪しかれ自分自身に帰ってくると言われています。それは、人間の脳が一人称と二人称の区別が出来ないからなのです。そのため、人は自分が他人に放った悪口に苦しめられることになります。
子供は自分を責める
アンは自分を責めています。自分のせいで、自分の何かが悪いから母親が病気なのではないかと思っています。でも、「アンのせいではない」とヴァイオレットは言います。
子供は基本的には、何か悪いことがあった時には、自分のせいだと感じやすいようです。だからこそこうしてはっきりと「何か悪いことがあっても誰かのせいではない」と言ってもらえると少し、安心できます。
脱線ですが、誰かに何らかの不幸があった時に人は、自分のせいでそうなったと責めやすいものです。きっとそういう場合もあるでしょう。しかし、そうでない場合も多いものです。
特に子供の場合は、親の不幸である病気や、両親の不仲は自分のせいだと感じやすいものです。その様な子供の頃からの感情は大人になった時に、自分を傷つけるものとなります。
だから、子供のために周りの大人が、「あなたのせいではない」とはっきりと言えると子供の心は救われるでしょう。
物語の本番
ヴァイオレットと母親の契約は終了しました。しばらくしてアンの母親は亡くなり、アンは一人になりました。
しかし、ここからが泣き所でした。
アンが8歳の誕生日に、亡き母からの手紙が届いたのです。
それは、ヴァイオレットが母に代わって書いたものです。
娘の成長を祝う言葉とプレゼントは毎年、娘が一つ成長するごとに送られてくるのです。
花言葉
成長したアン・マグノリアは、
「どうしてあなたは挫けずにいられるの?」
と言う言葉に対して、
「母が見守ってくれているから」
と答えます。
成長期に両親がいないと言う事実は、子供にとっては大きな打撃です。安心して育つことが出来ないし、自分の芯を作り、強固にするのも難しくなります。しかし、見守ってくれていると言う事実があるだけでも人生は変わります。
アン・マグノリアのマグノリアの花言葉は「自然への愛」「崇高」「持続性」とありますが、まさにこのストーリーの主役を務めるにはピッタリな名前ですね。
持続的に送られてくる母親からの愛と保護。
それは崇高で美しい。
また、挫けずに育ったアンもまた、崇高な存在だと思います。
ヴァイオレット・エヴァーガーデンのテーマは愛
ふと愛って何だろう?と疑問に思うときにぜひヴァイオレット・エヴァーガーデンを選んでみてください。
それは主人公のヴァイオレットがずっと探している言葉の意味です。
アニメでも小説でも非常に美しい愛が描かれています。