ヴァイオレット・エヴァーガーデンには本当に素敵なストーリーがたくさん詰まっています。
とはいえ、結構えぐい話もありますが。
バイオレット・エヴァーガーデン(外伝)には、ヴァイオレットの仕事仲間のカトレアの恋愛、ベネディクトの過去話、郵便社の社長・ホッジンズとギルベルトの出会い話がつづられています。
自分の存在が希薄になると自信が持てない
印象に残ったのはベネディクトの過去話でした。
記憶喪失のベネディクトに唯一残っているのは、妹がいたと言う感覚だけでした。
記憶が無いという感覚は人を不安定にします。今まで、自分が何をしてきて、どんな考えを持っていたのか、どんな人だったのかと言うのが記憶にありません。
それは、自分と言うのを確立するには困難になります。
「今の自分があるのは、過去の自分があったから」
と言う自分の自信を作るものが無くなります。
自信が無くなれば不安になる
自分の存在がどのようなものだったかが分からなくなると、不安で簡単に何かを信じようとするかも知れません。
「私はあなたの妹よ」
と言う女の言葉にベネディクトは動揺してしまいます。
その言葉を信じてしまいたい、でも、確固とした証拠が無い・・・
悶々とした気持で呆けたようにになります。
ここに仕事で共にいた冷静なヴァイオレットは事情を聞き、ベネディクトを否定もしない、肯定もしない態度で接し、かつてヴァイオレットが雨宿りに入ったカルト教団で、半神だと言われた時の事を語ります。
ヴァイオレットにも過去の記憶は無いから、そう言われればそうかも知れないと思い込んでしまうから、ベネディクトも「妹だ」と言われたから、そうだと思い込んでしまっているのではと。
つまりは、騙されてないですか?
と。
欠落を埋めようとする心
「何かが無い」
「何かが足りない」
そんな感覚は人を不安にさせます。
だから、人はその欠落した穴を埋めようとします。
手近に穴を埋められる道具があればそれを使おうとします。例えそれがぴったり合うものでは無くても・・・
誰かを利用しようとする人は、不安な人のその感覚を利用します。
ベネディクトの記憶には金色の髪の妹しかなかったから、その髪の色をした女に「妹だ」と言われ、助けを求められたら、助けたいと思ってしまいます。
騙された相手を助ける
騙された相手だから、助けを求められても助けない選択はできます。しかし、ベネディクトは「妹だ」と言って騙してきた女を助けました。
なぜかって?
その女に身ぐるみを剥がされて捨てられたから、ホッジンズと出会い、郵便社で働くことになった事に感謝をしていたからです。
だから、「糞みたいな女神」とすら読んでいます。
リアルでも超絶最低な扱いを受ける事もあるでしょう。
例えば、ブラック企業でパワハラ上司に怒鳴られたり、脅されたり、ありえないぐらいの量の業務を命じられた上に、出来ていないとののしられたり・・・
色々あります。
そんな状況で働き続けられる忍耐力のある人でも、嫌な気分を持ちますし、腹も立つでしょう。
悔しい思い、恥ずかしいと言う思いを抱くでしょう。
もしかしたら、復讐したい気持になるかも知れません。
上手くいけば反骨精神で成り上がるかもしれませんし、悪く行けば体を壊してそのブラックな会社を辞めるかもしれません。
物事が悪く運んだ場合、あれがだめだった、これがだめだったと恨み言を言い続けることが出来るかもしれませんが、悪い状況に陥った後にどう対処したかで自分の真価が問われます。
悪い事態に対して、「あれが人生の転機だった」「かえってよかった」かもしれないと思うことが出来れば、どんどん幸せを手にしていけます。
難しいですけど。はい。
あんな事が無ければ、こんな事が無ければとうだうだと頭の中で思ってしまいますが。
ただやっぱり、物事の意味をいい面で捕らえることが出来たら、一歩成長していますし、成長できます。
ただ、私が思うのは、明らかに悪意を持って接したきた人物に無理やり感謝しないことです。
助けようとしてくれた人、助けとなった本やなんらかの事態に感謝する事です。
ベネディクトも「女神」と騙された女に言ってますが、「二度と近づくな」とも言ってるくらい嫌ってますから。
最後に
外伝ではベネディクトがなぜ記憶が無いのかと言う理由には、とある実験場みたいな所で、薬を飲まされていたためとあります。
ヴァイオレットにも小さい頃の記憶がありません。もしかして、ベネディクトとヴァイオレットは・・・兄妹なのでは?
と、思ってしまいますが、作中では匂わせているだけなので、想像が膨らみます。
いつかまた、ヴァイオレットのストーリーが描かれることがあったら真相をもっと知りたいです。
アニメでもとても美しい画像とストーリーで魅了してくれたヴァイオレット・エヴァーガーデンですが、小説でも魅了してくれます。
アニメには無いストーリーが描かれています。
きっと来年には映画で小説にあるストーリーも描かれるのでしょうが、どんな風に映像になるのか楽しみです。